2012年9月7日金曜日

大阪中央郵便局解体直前の姿の報告。

黒川 暢一郎 様

6月7日に十数年振りに大阪での「たくみ会」に参加しました。
私の勤務した昭和50年から52年の間にともに仕事をした懐かしい人たちにお会いしました。しかしこれまでの30数年の間に設計課にいた人が3人(熨斗君、山田君、向井君)も亡くなりました。共に働いた仲間たちとの思い出だけは忘れることはできません。
この度は大阪中央局の最後となるかもしれない姿を眼に刻んでおきたいとの願いもあってOB会に参加しました。
寺崎部長時代の管財課長であった上田文男様とお話したところ、中央局に大変な思い入れがあり中央局の写真を数多く撮影した思いでもあり、局舎解体を目前にしてこれまでの写真を使ってDVDを編集・制作したとのことでした。
数日後にそのDVDを送って頂き、上田さんの中央局への熱い思いに感激しました。
上田さんのみならず多くの郵政人、市民も愛惜の念を抱いていることと思います。
翌日の8日には東京でお会いした「大坂中央郵便局を守る会」の長山会長にお会いしようと電話したところ保存運動に関して弁護士との打ち合わせがあり面会できませんでした。後からの電話では工事差止訴訟等の可能性について検討したとのことでした。長山さんは大変潔癖な方で、政治家への依頼はしたくないとの見解でした。
午前中は観音さんと大阪駅前の変化を20年ぶりに実感しました。駅前広場にはJRの駅ビルが突出して建てられ、駅前広場が狭くなっていました。阪急百貨店は旧外装デザインを復元しながら背後に高層ビルの建設工事がほぼ完成間近でした。
建築が都市の記憶装置としての意味を持つと考える私としてはこのような再開発の方法も可能だと思いました。
中央局は外周に仮囲いの工事中のため、在りし日の全容を偲ぶことはできませんでしたが、周囲を見て回って改めてその大きさ、デザインの緻密さに感激しました。東京中央局と比べて外壁が暗いのが難点ですが、かえって威厳のある姿になっていると感じました。これを再開発するならば私ならばどうするかと以前から考えていました。既に郵便局としての機能はなくなっているのでこのデザイン・空間を生かしながらいかなる用途を盛り込むかによって全体像が決まります。このような課題に挑戦することは建築家として最も力量を問われると共に、やりがいのある仕事です。今の日本郵政の施設部は自らの力でこの課題に挑戦するべきでしょう。
一番安易な道を選んでいてはかえって彼らの存在感が薄れるばかりです。
このような安易な解体新築の手法だけしか思いつかない貧困な建築集団にしてしまったことに郵政建築人として責任を感じます。
これからも多くの近代建築の遺産を保有している日本郵政建築はもっと過去・現在・未来を包含した広い視野の集団として活躍してほしいと願っています。OBとしての役割も忘れてはならないと思っています。
「スコラ建築倶楽部」でも現代都市における建築のあり方について研究し、議論していきたいと考えています。
多くの現役、OBの皆様の参加を期待しています。
大坂駅前広場周辺の写真を貼付しますのでご覧ください。

2012.6.21


野崎英彦




解体用仮囲工事
広場側外観
大阪駅前から中央局展望
阪急再開発完成直前
完成後の全体イメージ









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