2010年10月18日月曜日

建築家 佐久間達二の夢

「建築家 佐久間達二の夢」という遺作集が多くの友人、関係者の支えにより本となった。
佐久間達二さんは同じ郵政省建築部に職を得た大先輩であり、奇しくも佐久間さんが設計事務所を開設した名古屋で東海郵政局建築部長に赴任し何度かお会いした程度でしたが、大変印象の残る先輩であったと記憶しています。大変ご丁寧な熱の籠ったお手紙を戴いたことがります。その内容はかねてから計画の話しがあった東海郵政局庁舎の改築か、増築か、新築かという問題についてでした。この建物は昭和13年に名古屋逓信局庁舎として竣工したものであり、佐久間さんにとっては建築家をめざし、逓信省に入りたいとの思いに取り付かれた大変思い入れの強い建築でした。昭和17年に逓信省営繕課に奉職した後、昭和20年には名古屋逓信局総務部営繕課に赴任し、昭和32年には設計課長になり、昭和39年に栄転を拒んで退官して地元名古屋で独立するまでの19年間をこの建築の中で仕事をしていたのでした。この年今だ47歳であったことを知り、佐久間さんの建築家としての意地を感じました。私が郵政省に入省したのは佐久間さんが退官した後の昭和40年であり、名古屋に赴任したのは昭和58年でしたから佐久間さんとは23年という親子程の経歴差がありました。初めて佐久間さんが東海郵政局に来られてお会いした時は66歳であったことになりますが、独特な雰囲気をお持ちになっており、独特な話し方、はにかむような笑顔そして隙のない古武士のような物腰をいまでも思い出します。この度この遺作集を読んで佐久間さんの魂のありようを理解することができ、あの独特な人物像への私が抱き続けていた謎が氷塊しました。逓信建築の諸先輩が持っていた建築への純粋な思いがこの遺作集から伝わってきます。ぜひ多くの後輩、建築を志す人によんでもらいたいと切に願う貴重な遺作集であると感じました。

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